ムッシュが日本にいてトウールーズを懐かしく感じる「味覚」は、
何といっても「鴨」です。
フランス南西部が産地のジューシーな鴨を使った料理は、
日本では味わえない多様さと深さがあります。
鴨は、トウールーズの人々にとって、身近にある食材です。
例えば、ラグビー場の周りには屋台があり、試合の前後には、
バケットに鴨胸肉のロースト(Magret de canard)を挟み、
フライドポテトを添えて出してくれます。
ぷーんといい匂いがして食欲をそそり、
ビールと合わせて、10ユーロでお釣りがでます。
鴨胸肉はちゃんとしたレストランでも、メイン料理として登場します。
焼き方も尋ねられますので、大抵ミディアムレア(Saignant)でオーダー。
名物カスレもトウールーズではソーセージとともに、
鴨もも肉のコンフィが入っています。
マリアージュするワインは、地元の例えばガイヤックやマディラン、
もしくはラングドックの濃い目の赤が最高です。
★Toulouseでお薦めレストランは、Genty Magre。
町中にありながら、手頃な値段で、
地元料理とワインが楽しめるレストランです。legentymagre
一方、ピレネー山脈近くのジットや山小屋では、
いわゆる長いテーブルで他の旅行客と一緒に、卓を囲むことになります。
ここでは雌子鴨のロースト(Canette Rotie)が
大盛りにして供されることが多いです。
色も結構グロテスクで油濃いのですが、
山のように積まれた生野菜と、格安地元ワイン、
そして何よりおしゃべりのおかげで食が進みます。
ただ長逗留していると、コテコテのフランス南西部料理に飽きてきます。
そんな時にはマルシェで鴨を手に入れ、スーパーでみりんや醤油、
そばを買ってきては、和風の「鴨の治部煮」や「鴨南蛮」を作って、
ひと時の日本気分を味わうこともできます。
今年は、そういった料理は味わえないので、
近くの精肉屋さんでの高い鴨肉でガマンですね。
とても恋しく思い出されます。
執筆者 ムッシュF