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ティザン (Tisane)。フランス人の生活に浸透するハーブティー

  はじめてハーブティーを飲んだのは大学生活、アルバイト先の休憩で。。。

 

 大学時代にアルバイトをしていた南青山のKIHACHI 1号店。巨匠熊谷喜八シェフ自らがキッチンに立っていた黄金のバブル時代。スタッフやお客さんも外国人が多く、田舎からでてきた私にはとても刺激的な場所で、考えてみたら、この頃から無意識の中で、その後フランス暮らしにも繋がっていたのかと思うとなんとも人生は面白い。

 

 ある日 アルバイトのフランス人ドミニクが、””お茶を一緒に飲みませんか〜?” 休憩中に声をかけてきました。D'accord ダコール。ちなみに、会話は日本語でした。😁

 

 ランチタイムとディナータイムの間の数時間の休憩時間。数人のシェフたちが、勤務でクタクタ(レストラン従業員がどんなに過酷な労働環境にいるかは、人生その頃に学びました)、そこら辺のソファーの上でシエスタをしている静まり返ったホールで、ドミニクは自分でお店のハーブティーを私の分も用意してくれました。(あれは無断で飲んでいたのか、、?よく考えると緩い時代。)

 

ティーバックの入った箱の色は黄色で、菊科のお花のデザインが描かれていました。カモミールでした。ハーブティーを飲んだことがなく、そもそもハーブティーて”なあに?” 雑草のお茶、、?😅

 

 現在はカモミールといっても、たくさんの銘柄、ブランドが日本でもありますが、当時はハーブティーの種類がそんなに市場になかった日本。ほぼ独占市場で、有名メーカーがハーブティー市場をほぼ独占していました。ハーブティーといえば、この会社で、スーパーの陳列の日東紅茶の横で販売されているカモミールティー。ハーブティーの種類だってほぼカモミールティーが独占状態。ハーブティー = カモミールティーというのが私のなかの狭い見識でした。

 

 ところでドミニクは今思い出しても、とってもハンサムなフランス人。そんなドミニクが目の前でいれてくれるハーブティ。それだけでロマンチック。私にとってははじめてのハーブティー。カモミールティー。舞台は青山、KIHACHI。ドキドキの初体験。まさかはじめてのハーブティー体験をこんなハンサムなフランス人と一緒にするなんて、人生は薔薇色。

La vie en rose!!!

 

 スマした顔をして一口いただき。。。。”ん?” ハーブティーは緑茶や紅茶と比べても色も味も薄めなので、はじめの一口ではよくわかりません。 2口目をいただき、”ん?”

 

”まずっっっ。。💧

薄い色のわりには、”にがめ”の”くせのある”お味。。。

”Ce n'est pas bon." (日本語で。。。)

私苦手かも。。。 

 

 ドミニクは休憩になるといつもこのハーブティー、カモミールティーを愛飲していました。

フランス人の舌はどうなっているのかしら?と顔はいけめんだけど、なんだか暗い表情でまずいカモミールティーを哀愁を漂わせながら飲むフランス人を遠くからみるたびに、”フランス人は複雑ね〜”。🤣

 

 それ以降、ハーブティー = 美味しくないとインプットされてしまい、長い間私の中で封印になってしまったハーブティ。

 

 それから約15年後。人生の予定になかったフランス生活。

フランス人の友達が出来始めた頃、自宅に招かれて、

”何を飲む?Tisaneティザンを飲む?” 

ティザンてなあに?

 

 ハーブティーは日本語で、フランスではティザンと呼ばれることがわかったのです。そして衝撃だったのが、そのティザンは庭から直接採ってくるプラントの葉っぱ。私とレモンバーベナとの出会いでした。 小さなポットには沸いたお湯が用意され、その中に、いま庭から採ってきたバーベナの葉っぱが無造作に入れられ、待つこと5分くらい。やはりティザン、5分待ってもその色は果てしなく薄い黄色、いや少し緑がかって、なんとも淡い素敵な色。そしてなによりその香りの優しさ、暖かさ。飲む前から”美味しそう!”。

 

 一口飲んで、”C'est tres bon!" これが私とTISANEの出会いでした。”苦手!”と決めてしまったあのハーブティーが、庭のプラントを摘んで煎じる”ティザン”となり、まるで別物になって再会。本物の味はこんなに美味しかったんだ!

 

 フランスならどこでもプラントの葉っぱを煎じて飲んでいるわけではなく、レストランでもCafeでも多くの場所は、ティーバックTISANE。 フランス人の家で食事をすると必ず食後に、コーヒー?TISANE? と聞かれてもほとんどの場合はティーバックTISANEが登場します。

 

 ナチュラルライフ志向、田舎暮らしでかなりこだわったフランス人や、家でハーブを栽培しているくらいになると、この本格的なプラントの葉っぱ、茎、花などを小さなポットに無造作に入れお湯を注ぐ。または年中いつでも飲めるように、乾燥TISANEを日常飲んでいるというのがフランスのティザン環境です。

 

 TISANEと出会い、いまでもレモンバーベナは好みのひとつですが、タイムやミント、メリッサ、ラベンダーなどマリアージュしたものもなかなか味わい深い。そして、やはり気候や土壌で、ティザンと一言でいってもそれぞれお味が違うのも奥が深いですよね。カフェインを気にするフランス人にも親しまれていて、風邪をひいた時やちょっと具合が悪い時などにもティザンを勧められたりします。

 

 ところで、ドミニクと一緒に飲んだ、ティーバックのカモマイル。その後、フランスに来て、庭のカモマイルを飲む機会がありました。お花は大変可愛らしのですが、やはり味には少しクセがあります。それでも、プラントはティーバーックとは全く違う、繊細な香りと味。

 

 メディカル的にもたくさんの効果が期待されるので、やはり”薬”と考えれば、はじめて飲んだ時に”えっ、にがい、、、?”は妥当な反応だったのかもしれません。

カモマイルで期待される効果としては、鎮静、保湿や解熱。アレルギー、発汗、風邪、万能なプラントです。

 

Bonne dégustation! 

 

執筆者 田所

 

本格派 ティザン ハーブティー
本格派 ティザン ハーブティー